← Portfolio に戻る 実録シリーズ 第2回 / 全6回
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決めたことを、AI の外に置く

一晩で消えた提案書の話から始めます。AI と作業していると、書いたはずのものが翌日には無いことがあります。 第2回は、そうならないように「何をどこに置くか」を決めていった記録です。

2026年6月20日、家族の写真をまとめて置いておくためのサーバーの構成案を作った。手持ちの写真がどれくらいの容量になるのか、壊れたときにどう戻すのか、月にいくらかかるのか。1時間ほどかけて一通り書いた。

翌日、それは無かった。

作業用のフォルダに置いたまま、どこにも登録せずにその日を終えていた。自分の管理下にある文書のどこにも、そんな提案書が存在するという記録がなかった。結局、作り直すことになった。

消えたのはファイルだけではない。「なぜこの構成にしたか」も一緒に消えていた。作り直したものは、おそらく前の日のものと少し違う。

AI は毎朝、何も知らない状態で出社してくる

セッションが切れれば、前の話は残らない。これは不具合ではなく仕様だ。

最初は、その仕様を運用でごまかそうとした。長い会話の最後に要約を作らせておいて、翌日それを貼り直して再開する。悪くない案に思えたが、続かなかった。まず貼り忘れる。貼っても、要約に残らなかった細部のほうが後になって効いてくる。そして毎回、その要約を作る手間が発生する。

やり方ではなく、方向が間違っていた。AI に覚えさせる方法を探していたが、覚えていなくても回る形にするほうが早い。

決めた前提はひとつだけだ。会話は作業場であって、記録ではない。 正しい状態は必ず文書の側にある。AI が覚えているかどうかは、設計から外す。

1つのファイルに全部書いたら、読まれなくなった

「文書に書く」だけでは足りなかった。

最初は部門ごとに1ファイル用意して、そこに何でも書いた。やること、やったこと、決めた理由、保留にした案。数週間で、開くのが億劫な長さになった。

これは自分が読まなくなるだけの話ではない。セッションのたびに AI にそのファイルを読ませているので、今週やることを1つ確認するために、3ヶ月前の完了報告まで毎回読み込ませることになる。渡す量が増えるほど、返ってくる答えは的外れになっていった。第二の脳のときと同じ失敗を、置き場所を変えてもう一度やっていたわけだ。

書く場所を2つに割った。片方には現在形だけを置く。やること、今週やっていること。終わったら消す。もう片方は追記専用の履歴で、一度書いた行は編集も削除もしない。

分けた理由は、聞かれることが2種類あるからだ。「次に何をやるか」を知りたいときに要るのは現在形だけで、これは軽いので毎回読ませていい。「なぜそう決めたのか」を知りたいときに要るのは履歴のほうで、こちらは重いが毎日開くものではない。混ぜておくと、毎回すべて読むか、過去を捨てるかの二択になる。

ここで一度失敗している。現在形の側は、完了が溜まったら1〜2行に畳むことにした。詳細は履歴に残るのだから困らないはずだった。ところが要約に残るのは結論だけで、「なぜ A ではなく B にしたか」が抜ける。数週間後に同じ論点が再燃したとき、当時の比較をもう一度やる羽目になった。以来、履歴の各行には「判断・知見」の欄を設けている。選んだ結果ではなく、何と迷ってなぜそちらにしたのかを書く欄だ。

効いたのは、書かないと終われない場所を作ったこと

冒頭の提案書が消えたあと、ルールを1つ足した。

新しく何かを作り始めるときは、着手した瞬間に、まず担当部門の一覧へ1行だけ書く。「◯◯の提案書を作る」。それだけでいい。中身はまだ何も無くていい。

この1行には仕掛けがある。その一覧は保存状況を監視しているファイルなので、1行書き足した時点で「未保存の変更がある」状態になる。そして未保存の変更が残っているとセッションを終了できない仕組みが入れてある。着手を宣言した瞬間に、保存せずに立ち去る経路が塞がるわけだ。

やったことは、ルールを増やすことではなく、記録しないと先に進めない形にすることだった。

同じ考え方を報告のほうにも当てはめている。作業報告に「次回やる」「返事待ち」と書いて終えると、それはチャットの中にしか無い。翌週ダッシュボードを開いても、そんな項目はどこにも出てこない。だから、続きのある話を報告に含めるなら、報告を終える前に一覧へ1行起こす、という順番にした。

現在地

この記事を書いている時点で、現在形の側は全部門あわせて約1,100行、追記専用の履歴は約500行。管理リポジトリの初回コミットは2026年4月26日で、コミット数は800を超えたところだ。AI 側が持っている記憶の機能についても、中身をそのまま private のリポジトリに置いて、更新のたびに保存するようにしてある。この PC が壊れても、同じ文脈から話を始められる。

一番変わったのは、セッションを閉じるのが怖くなくなったことだった。会話の途中で終了しても、失うものが無い状態を目指している。文脈が消えることを前提に置くと、消えて困るものは外に出すしかなくなる。

ただし、これで別の問題が生まれた。文書を唯一の正にすると、今度は文書のほうが嘘をつく。「完了」と書いてあるのに、終わっていない。次回はその話を書く。

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運用ループと「一次情報で検算する」規律

正にしたはずの文書が古くなる問題を、どう運用で潰したか。(準備中)